『ククッ……今お前の側にいないのが悔やまれるな。いたら、その赤くなった顔に何度でも口付けてやるのに……』
「っ!?」
やっぱり朔夜は朔夜だ。
こんな風に声だけでも私の心を自由にもてあそぶ。
会いたい……。
朔夜に会いたい!
会いたいという想いが、私の力となっていくようだった。
またあの不敵な笑みを見られるなら。
またあの力強い腕に抱かれるなら。
そのためなら、何だって出来る気がする。
そう想いを募(つの)らせていると、朔夜がチッと舌打ちした。
『あの女が来たな……。仕方ない、ここまでだ』
それは別れを意味する言葉。
私の心に、また僅かに寂しさが戻ってきた。