思い出して、理解出来てしまったからだ。

十六夜の涙の訳を。



彼は、本当にお母さんのことが好きだった。

だからこそ自分を拒んだお母さんを憎み、殺した。


そして、愛した人を殺してしまったかなしみと絶望が、彼自身を狂わせていたんだ。



当時理由も分からなかった私は理解できなかったけれど、今なら分かる。

……分かってしまった。



恋した人に拒まれることで愛が憎しみに変わってしまう気持ちも。

その憎しみから相手を殺してしまっても、それでも尚愛しているため狂ってしまう気持ちも。


実際に体験した訳じゃなくても理解出来てしまった。



私もそれほどに恋し、愛せる人を見つけてしまったから……。