そして風を感じる。

朔夜が動いた様子は無かったから、十六夜がこちらに向かって来たんだろう。


でも、それからは何がどうなったのか分からなかった。

朔夜も動いたみたいだったけれど、避けたのか攻撃したのかも分からない。


どれくらい経ったのかも分からないけれど、私は最後の気力を振り絞ってもう一度だけ目を開けた。


そのとき見えたのは、傷だらけの十六夜。

明らかに死の寸前だ。


なのに彼は死の恐怖も、朔夜に対する怒りや憎しみすらもその表情には表れていなかった。


その顔に浮かぶのは――。



微笑み。

晴れやかな、安らぎすら感じさせる微笑みだった。


そんな十六夜と一瞬目が合い、彼の感情が流れ込んでくる。

同時に、私は今度こそ深い眠りに落ちた……。