「十六夜を何とかするまで待って。私、両親の仇を打つまで死ねない」

十六夜の名前に朔夜が少しだけ反応した。

でも私は構わず続ける。


「何とか捕まえて協会に突き出すから……。それまで待って。……それまでには、覚悟を決めておくから……」

真剣な目で言ったつもりだった。

でも、実際は覇気のない弱々しい目をしていたかもしれない。


朔夜を拒んだ事で、嫌われてしまうんじゃないかと心の何処かで怯えていたから。


朔夜はそんな私に気付いただろうか。

その表情からは何も読み取れない。


ただ、静かな表情で「分かった」とだけ返ってきた。


そしてまた私達は抱き合う。


キスをしてくる朔夜は優しかったから、私のこと嫌ったりはしてないよね?



優しい時間は、まだもう少しの間続いた。