床には黒い水溜まりが徐々に増えていく。

微動だにしない両親に、嫌な予感がした。


「お、とう……さん? おかぁ……さん?」

掠れる声をやっとの思いで出した。

でも、呼び声に両親は全く応えない。


代わりに魔物の男が私を見た。


心が凍り付くような恐怖。

男の視線を受けただけで私は身動きが出来なくなった。



殺気。



男は、確かに私を殺すつもりだった。

でも、近づいて来た男は私を間近で見て凶悪な笑みを浮かべる。


「ぅ……あ……」

私は叫んで逃げたかった。


でも、声が出ない。

体も金縛りにでも遭ったかのように指一本動かせない。



男が、死よりも恐ろしいことを企んでいるということは見てとれたのに……。





そして、私は恐怖と苦痛を思い知った……。