家が、嫌いだった。 愛されてないわけではないんだけど、常に愛されてるかと言われたら、そんなことなくて。 気分や機嫌、あたしの成績で全てが変わる。 完璧ではないこの空間は、どうしても好きになることができなかったの。 「愛奈!」 オカアサンの声が、背中越しに聞こえる。 振り向かなかった。 振り向こうとも、思わなかった。 あたしが外に出ちゃえば、オカアサンは追いかけてこないことをあたしは知ってる。