『……。』 バンっ、って。 わざと攻撃的な大きな音を立てて。 無言で誰もいない空間を睨みつけながら、自分の家に入った。 もう少しで“あの人”が出てくる。 「あら、愛奈。」 ……ほら、ね。 奥の方から、ガサガサって、立ち上がったような音がして。 小さい足音が、だんだん大きくなって近づいてくる。 「おかえり。」 ―…オカアサン。 別に出迎えなんていらないって、言ってるのに。 いつになったら止めてくれるんだろうか。