見慣れた一軒家が見えてきた。

今日もこの街は雪が降っていて、一歩、また一歩と進むたびに、靴が雪に沈んでいく。



雪を見ると、先生がいれてくれたコーヒーをいつだって思い出すんだ。





『ここだ。』




少しかじかんできた指先で、一軒家のチャイムを押す。

一軒家の中からは少しの沈黙のあと、ドタバタと騒がしい音がこちらに近づいてきた。





「はい、尾崎です。」




ーー懐かしい声と共に、ドアが開いた。



ドアの先にいた人は、相変わらず即興で整えたから、ところどころ髪がぴょんぴょんしていて。

だらしがないスウェットパンツの上に、ラフなTシャツをゆるっと着こなしていた。



ドアの先にいた人は、私の姿を捉えた瞬間、目の中の瞳を大きく見開く。





『お久しぶりです。』