ーーこの街は、最初は大嫌いだったけど、今ではたくさんの思い出がある。 冴花っていう、私の初めてのちゃんとした友達ができたし、 なにより、先生。 私が生まれて初めて、大切にしたいって思えた人。 この街には先生がいる。 『…冴花、私、行ってくる。』 「ん、行ってきな。」 『わざわざ来てくれて、ありがとうね。』 私は先生のあの家を、今でも覚えてる。 行き方だって、忘れたりしない。 私の家だった場所の向かい側。 1人暮らしには大きすぎるあの場所に、先生は今でも住んでいる。