冴花は、何も言わない。
涙をこらえるように踏ん張りながら、ただ黙って、肩をプルプル震わせていて。
私はそんな冴花を直視することができず、先生ではない、何もない一点を見つめるしかできなかった。
「……ほらほら、席に座りなさい。」
「……。」
「あとで話しはきくから。な?」
先生が困ったように冴花の方に歩み寄り、冴花の斜め下から顔を覗き込む。
冴花はそんな先生を避けるかのように、自分の席へと黙ったままスタスタ歩いていく。
それを見たあたしも、下を向いたまま自分の席に座った。
「えーと、では、気をとりなおして、ショートホームルームをはじめたいとおもいます。」
先生が困ったように、手でぱんぱんと叩き重たい空気を吹き飛ばしながら、ショートホームルームを強行突破ではじめ始めた。
そして、改まる前に一言。
「汐留、ちょっと事情を聞きたいから、昼休み職員室まできなさい。」
先生は私をちらっとみながら、淡々とこう告げたのであった。


