お母さんは、子供に無関心なお父さんにいつもこう言っていた。
"少しくらい、子育て手伝って。"
"愛奈を1人で世話するのは大変なのよ。"
そういうお母さんに、「金を稼いでるんだからいいだろ」というお父さんの声を、嫌という程聞いている。
『……っ、そもそも2人に仲がいい時期なんてあったの?』
かすれるような、声だった。
私を押し付けあうように喧嘩する両親が嫌だった。
私のことでどんどん仲が悪くなっていく両親をみて、目を背けたくなった。
2人が、喧嘩をしないように。
私はとても、物分かりがいい子になった。
『私がいない時は、2人は仲が良かったんでしょう?』
ーーそうすれば、
そうすれば、すこしは私のことを、愛してくれるんじゃないか、って思ったから。


