"お父さん"
その単語だけで、私の心が強張るのを感じる。
今はそれどころじゃないのに。
リューガに振られてしまったこと。
明日からの私の立ち位置。
色々なことを考えなくてはいけないのに。
それでも"お父さん"って単語を聞いたら、私は無視をすることができなくなるの。
「お父さんとママ、もう一度やり直そうと思って。」
ーーお父さんは、私に興味がない人だった。
『は…?』
思わず不機嫌な声が出てしまう。
今更、そんなこと言われても困る。
お母さんは私の鋭い声に珍しく怯むことなく、私にまっすぐと目線を合わせていた。


