「…あーいなっ!」 ―…思わず、忘れてしまっていた。 いつの間にか、名前で呼ばれるようになった呼び方。 いつだって楽しそうなその声に、あたしは現実に引き返される。 そうか。今、あたし、学校にいるんだ。休み時間なんだ。 あたしは今、“アイナ“なんだ。 『なぁに?』 慌てて頬を引き上げ、首を傾げて、あたしが一番可愛く見える角度をつくる。 あたしの名前を呼んだのは、あたしの今の“狙っている人”。 ちゃんと笑顔ができてるかな? 笑顔が引きつってそうで、怖い。