「ごめんな、汐留。」 『っ…、』 「俺が悪かった。」 こんな、自分がキライ。 涙なんて、見せたくないのに。 センセーにはもう、2回も涙を見せてしまった。 自分が、大嫌いだ。 「泣くなよ、愛奈。」 ―…センセーが度々あたしの下の名前を呼んでくれるようになったのは、この日からだったね。 センセーが奏でる“愛奈”は、まるで宝物みたいに。 宝物みたいに、大切に、壊れ物のように口ずさむ“愛奈”が、あたしは愛おしくて仕方なかった。