「…汐留。」 『……。』 「汐留。」 センセーのパーカーからは、センセーの香りがした。 香水とかつけてるわけじゃなく、飾り気はないんだけど。 この距離にならなきゃわかんないくらいの、洗剤の匂い。 久しぶりに確かな、人の温もりを感じた気がした。 「―…愛奈。」 胸が、ギュゥゥッと掴まれたような気分だったの。 下の名前で呼ばれたことにビックリして、思わず顔を上げたら。 センセーは困ってるわけでもなく、怪訝な顔をするわけでもなく ただ、笑っていた。