間もなくして、ドアが開く。
部屋からはやっぱり、グレープフルーツの香りがした。
「期待してました? 俺が来ること」
玉置はにっこり笑う。
「あなたが来るように、私が仕向けたのよ」
優はスルリと玄関に入り込み、後ろ手に鍵を閉め、そのまま玉置を腕の中に閉じ込める。
いつかのように唇を重ねると、玉置もそれに応える。
「ところで、先生」
「なに?」
「7年ぶりに再会してすぐにこんなこと言うのもアレなんですけど」
「なに?」
「抱いていい?」
花の色は移りにけりないたづらに
わが身世にふるながめせしまに
小野小町
人はいさ心も知らずふるさとは
花ぞ昔の香に匂ひける
紀貫之
fin.



