歩きながら、視界が揺れる。 心臓はバクバク激しい音を立てて、全身の緊張をなんとか鎮めようと血を巡らせていた。 悟られたくないから、振り返らない。 俺、先生に何した? 何を口走った? 覚えてはいるけれど、あまり意識はなかった。 冷静になったのは、自宅のドアを開け、嗅ぎなれた家の香りに包まれてからだった。 「あ、お帰り」 迎えてくれたのは、風呂上りの姉だった。 「ただいま」 姉は優を見るなり眉間にしわを寄せた。 「ちょっと、優」 姉が指をさしたのは、自分の唇。