「グレープフルーツの香りは、モヤモヤした気持ちをリフレッシュさせてくれるんだって」 「先生、モヤモヤしてたの?」 「まあね、あたしにも色々あったのよ」 「色々?」 「そう、色々。でも、梶原君のおかげで立ち直ったの」 「え? 俺?」 「うん。ありがとね」 玉置は満面の笑みを見せて、再び部屋へと戻っていってしまった。 そして、それ以降ベランダに現れることはなかった。 教師だった頃とは少し違う話し方で、ありがとね。 それが、二人の別れの言葉だった。