「ダメだ。サッパリ意味わかんねぇ」 梶原は手に持っていたシャープペンシルをノートの上に投げ出すと、そのまま髪をかきむしる。 テーブルの90度横に座っている美奈実は、呆れた顔で彼を諌める。 「源氏物語の中でも、有名なシーンじゃない」 「有名とか言われても、俺知らないもん」 そりゃそうか。 彼は古典になどこれっぽっちも興味などないだろうし、美奈実自身、源氏物語をじっくり読んだのは大学時代のレポートのためだった。 「光源氏が、紫の君を誘拐したシーンよ」 「はぁ? 誘拐?」