「鍵を返しに来たんだ」

「ああ、うん」

「それから、ちょっとお知らせもあって」

「お知らせ?」

 何も知らないという玉置。

 自分のミスが招いてしまった事態ではあるが、敗者の意地として玉置を高澤の手に渡したくはない。

「そう、残念なお知らせ」

「なに?」

 これが最後かもしれないと、スワロフスキーの埋め込まれたメガネを外す。

 美しい顔が不安に歪んでいた。

「高澤先生に、俺達のことがバレました」

「え?」

「ごめん、先生。俺、あいつの罠にハマッちゃった」