「私、実は今、人と会っているんです」
窓越しに、とは言わないでおく。
美奈実は梶原に向かってそっと人差し指を唇に当てて見せた。
彼はコクリと首を縦に振る。
「え?」
「そういうことですから、長電話はできません。これで失礼します」
そして美奈実は電話を切った。
嘘はついていない。
しかし、この時間に床に就いていて、更に人と会っていると伝えれば、通常の成人男性なら良いように誤解してくれるはず。
美奈実は窓を開け、ベランダに出ることにした。
秋の夜風はもう大分冷たくなっている。
「先生、電話?」
「うん。仕事の電話」
笑っている梶原に釣られ、美奈実も自然と笑顔になる。



