電話越しの高澤の声が痛々しい。
早く切り上げて欲しい。
しかし、そんな思いも通じることはなく。
「好きな人でも、いるんですか?」
またしても美奈実のプライベートに踏み込んでくる。
「お答えできません」
「理由くらい、聞かせてくださいよ」
美奈実は窓を見つめながらどう答えるかを考える。
彼氏がいると嘘を言えばいい?
それとも正直にあなたに興味がないと言えばいい?
「私は……」
返事に詰まっていると、眺めていた窓のカーテンが開いた。
もちろん開けたのは梶原である。
梶原は美奈実を見つけるなり窓まで開けてベランダに出てきた。
「先生」
と呼んだ声が電話の向こうに届いていませんように。



