「こうしてるとさ」


俺は視線を逸らした。
 
「なによ」秋本が意味深に視線を飛ばしてきた。

恋人に見える、とお世辞でも言えないよな。

俺は気まずい気持ちを抱きながら、

「親子に思われるだろ」

苦し紛れの言い逃れをしたせいで、右手を握り潰されそうになった。


……こんの、暴力女!

 
「イテェッて秋本っ、ちょっとは加減しろって。アラサーって現実は変えられないわけなんだしさ!」

「あんたにデリカシーってものを教えたいわよ。誰が親で、誰が子よ。百歩譲って姉弟ならまだしも、親子って」

「恋人だって言ったら怒るだろうから、親子って言ったのに」


「数百倍そっちの方がマシよ!」


全然分かってないんだから、食い下がる秋本はフンと鼻を鳴らして前を歩く。

なんだっていうんだよもう、お前の方が意味分かねぇよ。

俺のこと嫌いだったろうから、親子にしたっていうのにさ。


軽く吐息をつき、俺は秋本に引き摺られる形で足を動かした。

 

ご機嫌ナナメの秋本と一緒に来たのは服屋。
 
そこでまず下着を調達した。

服はどうにかなっても下着だけはどうにもならないから(借りるとかノットセンキューだろ!)、取り敢えず二日分調達。

服は秋本の古着を頂戴することにしたから購入を遠慮。

でも秋本自身は何か一着あった方が良いと言って、メンズ用のシャツを二着買ってくれた。


試着室で着て来いって言われたから、そこに入って着たんだけど…、ちょっと落ち込んだ。