神様に頭を下げた後、俺は近くのご神木らしき大木下に移動。
腰を下ろして一休みさせてもらうことにした。
 

「凄いな。でけぇ」


根本に寄りかかる俺はご神木を見上げて感嘆、ご神木は大層立派な図体をしている。

一体お幾つなのだろう、百年はゆうに過ぎてるよな。

ぱちぱち、ぱちぱち、何度も瞬きをしてご神木を見つめる。


「静かだな。すっげぇ心地が良い」


ご神木から目を放した俺は改めて神社を見渡した。

神社自体は寂れているというのに、此処の空気を吸えば吸うほど俺に安心を与えてくれる。

まるで俺を受け入れ、んにゃ、歓迎してくれているよう。

自意識過剰かもしれないけど、貴重なギザ十を賽銭に放った俺に居場所をくれているのかもしれない。


心なしかご神木から熱を与えられているような気がした。

木肌と自分の体を密着させると心身あたたかくなる。


吹き抜ける風の心地良さ、安心させる空気、誰かが側に居てくれるようなぬくもり。

すべてが悲観している俺の慰めになってくれる。


気分が落ち着くと、今度は今日一日の底知れぬ悲しみが込み上げてきた。
 
  
なんで今日はこんなに厄日なんだろう。


父さん母さん、喧嘩ばっかだし。

親友の(俺がそう思ってるだけかもしれないけど)遠藤を怒らしちまうし。

片恋を抱いている秋本にはこっ酷くフラれるし。
 

なんとなく生きている毎日の中で、俺は人生一番の厄日を迎えた気がした。