嗚呼。

声にならない声が漏れる。顔がくしゃくしゃになる。視界がぶれる。


崩れるように秋本は少年を抱き締めて膝を折った。
 

鞄を落とし、つられて膝を折る少年は突拍子もない秋本の行動に息を殺す。

「街中で何するの、お姉さん」

途方に暮れる少年を掻き抱いて、


「何処に行ってたのよ!」


怒声を上げた。


積もりに積もった感情を相手にぶつけて、背中に軽く爪を立てる。

ずっと捜していた。ずっとずっと心配していた。
皆、あんたがいなくなって心配していた。
 
化粧が崩れることも構わず目尻から雫を流し、肩を上下に動かし、相手の両頬を包んで馬鹿と連呼。
 

「あんたがいなくなってっ…、どれだけ私が…、わたしがっ。
散々好きだって言っておいてっ、消えるなんてっ、あんまりでしょ? ねえ?!」
 

そう責め立てると、「好きって…」少年は今度こそ迷子になったような顔を作ってしまった。

可哀想なほど途方に暮れている少年に、「私よ」私が秋本桃香よ、更なる混乱を与えてしまう。



桃香は自分で手一杯だった。
 

あれほど捜していた人物が此処にいるのだ。
もうなりふりなど構っていられない。

声を上げ、泣きながら秋本は少年の体をただひたすら抱き締める。

彼が幽霊だろうと、なんだろうと、こうして目の前にいる。


それだけで自分にとって嬉々であり、願ってもない奇跡なのだから。
 

成されるがままその場に座り込む少年を飽きもせず、いつまでも、いつまでも、それこそ声が嗄れるまで泣き続けた。



秋本にとって、少年、坂本健とはかれこれ15年ぶりの再会だった。



⇒1章