人心は、木漏れ日に似る

沖下の声が、海里の背中にかかる。


「じゃあ、行きましょうか。
早くした方がいいから」


さらにほのみの声も背に当たった。


「海里君、虫よけスプレーした?」


いや、と海里が呟いて振り返ると、つんざくような空気音と共に、冷気が肌に貼り付いた。


海里の真正面。

虫よけスプレーの噴射口を、銃口のごとく突き付けている、ほのみがいる。


強張った海里の表情が、ほのみに伝わったのだろうか。

顔を上げたほのみが、おずおずとスプレーを持った手を引っ込めていく。


「……あ、ごめん海里君。
いきなりかけたりして。

薬品の匂い、苦手だった?」


ほのみは怯えたように、的外れなことを聞いた。