嶋根平子が、半歩、海里に向かって足を踏み出す。

だが、残った軸足がついて来ない。

平子は、口を開くと一息吸って、何も吐き出せずにうつむいた。


――言えよ、嶋根。

――一言、行きたいって言えば済むことだろ。



海里の心臓が、硬くなる。

緩めたら、丘の時の様に、弾けてしまいそうで。



――誰でもいいから。

――誰か、行きたいって言えよ。

――でないと俺、たった一人で先頭を歩いて、馬鹿みたいだよ。