人心は、木漏れ日に似る

この廃屋は、もとは、宿舎だったのだろう。

コンクリート製で、単純な四角形のシルエット。
並んだ窓からは、粗末な部屋の造りが見て取れる。

だが、薄汚い黄土色の壁には、傷や落書きは全くない。

当時は、確かに真っ白だったのだろう。


西城将樹は、海里を追い越して3歩、廃屋へ近寄った。

将樹は肩越しに振り返ると、海里に言い放った。

「海里、俺とお前で行くぞ」

「……は?」

突然の将樹の申し出に、海里は冷ややかな目を向ける。

とりあえず、海里は文句を言ってみた。

「なんでだよ」

お前やる気なかっただろ、と言いかけた海里を、将樹は手を突き出して止めた。


「バッカ、お前、
こんな、今にもぶっ壊れそうできたねえ所に、女の子を入れる気かよ」

「うわー」

畑みかげが、はしゃいでいるとも退いているともとれる声をあげた。