海里はため息をつく。

人と付き合っていけば、その人の影を、否が応でも見ることになる。


『所詮お前は、自分さえ良ければ、他人はどうでもいいんだよな』

海里は今まで、影の部分しか見て来なかった。

その影に怯えて人から逃げ、差し出された手も素直に受け入れることができなかった。


だが人は、影だけではない。


「影が目につくからって、いちいち失望なんかしていられないよな」


海里は呟き、光と影が交錯する人の波の中へと入っていった。


きっとまた一波乱あるだろうという予感と、それを乗り越える決意を携えて。




――fin.