宿舎を出た時よりも濃くなった闇の中を、海里は足早に歩く。

海里は、冬乃にも、ほのみにもうんざりしていた。


誰とも口を利きたくはなかったのだが、森を抜けた頃、軽い足音が海里を追い掛けてくる。


「海里君、待ってよ!

……どうしたの?」


その声は相変わらず柔らかくて、海里を責める調子は全くない。

海里はため息をついた。

……こいつの優しさには、自分の嫌悪もかなわない。


「お前、江上のことをどう思った?」


海里がやや非難がましい調子で尋ねると、ほのみはきょとんとする。


「え、冬乃ちゃんのこと?

うーん……素直な子だなあって」


どれだけプラス思考なんだ、と海里は思わず吹き出してしまう。