人心は、木漏れ日に似る

沖下、ほのみ、海里は、目をこらし声を上げながら、茂みが脇を固める道を進む。

しばらく森の中を行くと、唐突に、よく通る声が響いた。


「やっと探す気になったのね。

まったく、トロいんだから」


聞き覚えのある、偉そうな声。


海里たちのいる道から、左へ数歩それた茂みの中に、やや長い髪の女生徒が立っている。

崖の上と、川の向こう岸にいた女生徒だった。


「江上さん!

こんな所にいたの!?」

沖下が、女生徒のもとへ駆け寄る。

けがはない、と心配する沖下。

あの女生徒が江上冬乃だったのか、と、海里は半ばぼうぜんと眺めていた。


『あなた。来なさい』

『来てって言ってるでしょ、なんで来ないの!?』


海里が改めて思い返してみると、崖の上でも、川岸でも、確かにこの女生徒は1人きりだった。

「……迷子だったのかよ」

海里はつぶやく。

あの女生徒の態度は、とても独りはぐれたようには見えなかった。