文化祭には他校の生徒や老若男女いろいろな人が来る。勿論、出会いを求めてる人は大勢居るはず。


『なかなかカッコいい人って居ないもんだよね』

アキコが隣でため息をついている。


アキコは元々恋愛体質で彼氏が途切れた事はほとんどない。


『マイはどう?病院とかでカッコいい人居たりする?ほら、よく漫画とかであるじゃん?』

『………』


友達は私の病気は知ってるけど、どんな病気かまでは知らない。もちろん心臓移植の事も。

きっと暫くすれば退院出来てまた学校に来れると思ってる。


『そんな人居ないよ。ほとんどおじいちゃんばっかり』

なんて、笑って返したけど心は笑ってない。


あの場所は必死で生きてる人達ばかりだから、そもそも恋愛は二の次。病気を治さなきゃ何も始められない。

でも友達が軽く考えるのは仕方がないと思う。

人間誰だって体験しなきゃ分からない事ばかりでしょ?私だって病気じゃなかったら病気の人の苦しみなんて分からない。


『マイ顔色悪いよ?平気?』

ナナミが私の顔を除きこんだ。


『そう?全然大丈夫だよ』


心臓の鼓動が速くて少し息苦しい。


私はね、ずっとこの場所に帰りたいって思ってた。明るくて、華やかで、とてもキラキラした世界。

みんなに置いていかれる事が怖くて早く早くと焦っていた。でも今の状況を受け入れて少しだけ開き直ってみたら、この場所は少し眩しすぎる。


薄暗いけど僅かな光りに集まってみんなが寄り添えるような場所。私にはそっちの方が合ってるみたい。