『ジャーン!桃のゼリー』


ランドセルの奥の方からカズキは手のひらサイズのゼリーを取り出した。多分給食で出たデザートで確か私が小学校の時も何回か食べた事がある。


『お姉ちゃん桃好きでしょ?それに病院のご飯全然食べないってお母さん言ってたから』


小学生にとってデザートは楽しみの一つ。それを食べずに取っておく事がどんな事なのか私は知ってる。


『あんたの方が桃好きじゃん』

『いーんだよ俺は。それにジャンケンで勝ったから二個貰ったの!だからこれはお姉ちゃんにあげる』


なに言ってんの。昔からジャンケン弱いくせに。

汚いランドセルの奥から出てきた生暖かい桃のゼリー。全然そそらないけど素直に受け取らない理由はそこじゃない。

なんか申し訳なくて。嬉しい気持ちは勿論あるけど。


『………それとも今って甘いもの食べちゃダメなの?』


なかなか受け取らない私にカズキがそんな事を言った。


正直、驚いてる。カズキは小さい頃から私の二の次でいつも病気の私が優先されてきた。

その生活に甘えて私は自分の病気について説明する事なく弟と過ごしてきた。カズキはまだ小さいし、言っても分からないからって。

だけどいつの間にか小学3年生になって、私の言った事がない知識を持ってる。

お母さんが言ったのかな。それとも自分で調べた?


心臓病に糖分はあまり良くないって事。