次の日。
平日の10時でも渋谷の駅前は人通りが多い。
定番のハチ公像の前で、集合の5分前に来てしまった。
時計の針の動きに焦らされながら、
うきうきと胸を高鳴らせている私は、まるで中学生のよう。
もう大人のはずなのに、
好きな人を待つ瞬間は、ドキドキしてしまう。
ううん。
今までだって、これほどドキドキしながら好きな人を待ったことはあるだろうか。
きっと、彼だから。
不意に視界に入ってくる、見覚えのある背格好。
さっきとは違う種類のドキドキが、私の胸を躍らせる。
「おまたせ。待った?」
駆け寄ってきてくれた彼。
「ううん、今日会えると思ってちょっと早めに来ちゃっただけ」
自然と差し出される彼の左手をそっと握る。
指に触れただけで、
掌に包まれただけで、
恋の魔法が私にかけられる。
「とにかく、どっか行こうか」
だって、
引き寄せられるようにスクランブル交差点に進んでいく、
それだけで、幸せな気持ちになれるのだから。


