「何かあったの?」 松田さんは笑って聞いてくれたが、 「いや、大学のテストが近いから、億劫で」 とそれっぽい嘘をついた。 「そうか。テストなんて懐かしいな」 松田さんがそう言って笑ってくれたから、つられるようにして私も口角を上げたけれど、億劫なのはテストではない。 同じテーブルの違う客、松田さんの後輩に付いている向日葵は、あたしと同じ境遇なのにけらけらと笑っている。 たくましいなぁ、向日葵は。 お客様をもてなすのが仕事だ。 励まされてどうするよ。 ちゃんと仕事しなきゃ。