撮影が終わると急いで家に帰り、現状把握をして作戦を練る事にした。
「落ち着け……落ち着け自分……」
まずドラマは中盤を放映中。
撮影は物語後半で、自分のシーンがあと5~6回の撮影。
その内天崎と一緒の撮影日が2~3回。
そうか2~3回……
「って、いやマズいよ。非常にマズいよ。もうほとんど会えないじゃんか!」
頭がパニックになり、部屋の中をワタワタと無造作に歩き回る。
それがどんなに無意味でも、落ち着かずにはいられない。
「かと言ってコチラから食事に誘うワケにも……稽古も俺と違って他の仕事もあるだろうし、多忙の天崎を捕まえるなんて無理な話だ!」
頭をクシャクシャと掻き乱し、平常心を失いつつある石垣。
過去に様々な恋愛はしてきたので慣れていないワケではないが、この年になっての抑えきれない鼓動は初めて。
寝ても覚めても相手の顔が浮かぶと言うのは、今までにない体験であった。
『すっきり……夏この頃!』
その女性の声に、石垣はすぐ反応して振り返る。
そこにはテレビが置かれ、CMが流れているのだが、映っているのは天崎優。
森林豊かな山の中の川で、足を広げて裸足で立つ。
白いワンピースと黒髪が靡き、飲料水の宣伝をしている。
こんなCMの声にも即座に反応してしまう程に、自分が自分じゃなくなっていくような感覚に陥った



