それはたった一瞬の、



けれどそんなものはただの杞憂だったとすぐに思い知る。

「でもあたしはどうしても沙霧を嫌いになれない」


釧奈の瞳からはらりと花びらがこぼれ落ちる。

錯覚であるとわかってはいても、それは花びらと変わりない切なさと美しさを併せ持っていた。


「隣にいたくて、たまらないよ」


弱くて、脆くて、消えそうな彼女を支えていたのは彼への想いだけだった。

それが彼女の唯一の支えだった。