それはたった一瞬の、



「沙霧は、釧奈の体のこと…知ってるの?」

「みんな知ってるよ。そうじゃなくたってあたしは、沙霧になら何だって話せるの」

胸を張る釧奈に、口をついて出た言葉。


「なのに、気持ちは伝えないんだ」

自信を持って話していた釧奈の肩が小さくしぼむ。

弱気と強気の狭間で、彼女はずっと足掻いていた。


「きっと沙霧はね、あたしが嫌い。だって沙霧はあたしにちっとも笑ってくれないもの」

違うんだよ、そう呟くのは罪だろうか。

そう思ったら何も言えなかった。
何か言っていれば、彼女の救いになったかもしれないのに。