「だからな、近くで聴く音がうるさくてしょうがねぇ」 そうか、だからいつも釧奈に向かってうるさいと言っていたんだ。 あれはケンカを売っているわけでも、うっとうしがっているわけでもなかった。 耳がよすぎる彼にとって、大きな音が苦痛なだけだったんだ。 …あれ、でも。 「釧奈は、そのこと…」 「言っただろ。誰にも話してねぇって」 どうして? だって、いつも一緒にいるのに。 「あいつにだけはこのこと、言うなよ」 男のプライドというやつなんだろうか。 それとも、もっと違う理由?