それはたった一瞬の、



どうしてそれを知っているのか。
それは私が柊と出かけた時に言っていたことだったのに。

それとも彼は沙霧にも同じことを話していたんだろうか。


「これは誰にも話してねぇことだ。俺の耳は、いかれてる」

首を傾げる私に、彼が笑う。

「訳わかんねぇよな。でも俺の耳にはありとあらゆる音が入って来るんだ。
藍火が、あいつと一緒に飯を作りなおしてたことも」

「…っ!?」

「きんぴら、作りなおしたんだろ。味付けはまずくなかったもんな。
材料を足せば調整はどうにでもなる」


これには今度こそ驚きだった。
彼が言っていることは、沙霧が台所を出て行った後に私が釧奈に言ったことそのままだ。

本当に彼の耳は…。