それはたった一瞬の、



釧奈がじっと沙霧を見つめる。
緊迫した空気に鼓動が早まる。

やがて沙霧が脱力したように息をつき、床に視線を落とした。

「どうせいつかは言わなきゃいけねぇんだ、早めに言っといた方がいいだろ。
…外、出とけ」

釧奈は頷くことも首をすることもせず、静かに部屋を出て行った。

寂しそうな背中が、ドアの向こうに消える。



2人きりになった部屋の中はやけに空気が重くて、呼吸すら満足にできない。

それを打ち破ったのは沙霧だった。

「いきなりこんな所に連れてこられて、まだ付いていけねぇだろ」

「うん、全然考えが追いつかない」

「だろうな」

彼が前髪を掻き上げる。
金色の髪が照明に照らされて、暗い水の中に光を灯す。