残念ながら、私に母さんの文才はほとんど受け継がれていない。 どうやら父さんの方の血を色濃く継いでしまったらしい。 父さんは習うより慣れろ、思い立ったが吉日、善は急げがモットーの人物だ。 要するに、頭より先に体が動くってこと。 「じゃあ学校行ってくる」 「おー、気をつけるんだぞ」 父さんの声が洗面所から聞こえるから、きっといつものようにちょっとでも若く見せようと奮闘しているんだろう。 もうそろそろその努力が無駄だということもわかってほしい。 ため息をつきながらドアを開けた所で――。