「ずっと思っていたの。あなたは…藍火が好きだったんじゃない?」 出かけようとする彼を呼び止めながら、自分自身の言葉に深く息をつく。 過去形の言葉に、彼女がもうここにはいないことを思い知った。 彼らを力の限り受け止め、共に一喜一憂してくれた彼女は、もう。 きっとこの家の中の誰もがそう思っている。 けれど、彼だけは違った。 「今も藍火が、ここにいる気がするんだ」 そう言った彼の目は、今まで散々周囲の目を誤魔化してきた嘘付きの目とは思えなかった。