それはたった一瞬の、



「みんなを呼んでくる」

背を向けて走り出そうとした私の足を、彼女の細い腕が力なく掴む。

体温が無いかのように感じられるほど冷たい手に心臓がぶるりと震えた。


「行かないでください、藍火」

「…よもぎちゃん」

足を止め、彼女を助け起こして口を開く。


「私、前に言ったよね。無理に聞き出すつもりはないって」

起き上がった彼女の隣でまだ寝転がっている箒は、どこか寂しそうに見えた。


「だけど言ったら楽になるかもしれないことを黙ってるなら、私は無理にでも聞き出す必要があるよ」