それはたった一瞬の、



「じゃあ行こうか」

その手を力強く握ると、彼はきょとんと首を傾げた。

それを無視してドアを開けようとすると、慌てるように彼が早口で呼びかけた。

「藍火!」


振り返るとそこには、もうシルクハットを被った彼の姿。

その目を見ても怖がる人なんて、この中にはいないだろうに。


「青い空は…僕の目にも、青く映るだろうか」

そわそわと落ち着きなく答えを待つ彼に、笑いかける。


「青空は青空だよ。
誰にだって青く見えるから、青空なんだよ!」

それ以上の理由なんてあるだろうか。