それはたった一瞬の、



だってここには柊もよもぎちゃんもいるのに、どうしてわざわざ私に話す必要があるだろう。


柊が口元を歪め、シルクハットを深く被る。

「僕たちにとってそんなものはもう、話す必要もないからね」


沙霧や釧奈も同じ気持ちだったんだろうか。

どうしようもなく不安になっても話す相手がいなくて、私の所に来てくれたんだろうか。


「特に沙霧は辛かったろうね」

その妖艶な微笑が網膜に強く灼きつく。

「聴覚のことを話しても気味悪がる人なんて、この中にはいないのに」

「…!?」


どうして、どうして柊がそれを――。