椋ちゃんが、外したネクタイをクローゼットにしまう。
その横に並びながら、腕を組んで、独り言みたいに文句を言う。

椋ちゃんは黙ったまま、聞いていた。


「ほんっと、ムカつく。なんなんだろ、あいつ」


無理やりされるのが好きなんだろとか意味分かんないし。
自分こそ無理やりが好きなんじゃん! サドのいじめっこが! 変態!

パタンってクローゼットを閉めた椋ちゃん。
一通り文句を言ったところで、やけに静かな椋ちゃんに気付いて、腕に触りながら顔を覗き込んだ。


「……椋ちゃん? もしかして、怒ってる?」


本当に嫌がらせみたいにされた事だし、不可抗力だった。
それに、冷静な椋ちゃんだから、こんな事で怒ったりはしないと思う。

けど。
あたしを見た椋ちゃんの瞳は、すごく感情的だった。


「わっ……」


目が合った途端、腕を掴まれて、寝室にある机に押し倒された。
椋ちゃんが普段仕事で使ってる机から、置いてあったペンだとか書類が床に落ちる。