夜をすり抜けて


「もう一年半くらい前かな。佐伯さん、独立して運送会社を立ち上げたんだよ」


「へぇ」


「大口の顧客から定期的な仕事を回してもらえることになってて。

初めは一人だけど、どんどん仕事取って
人も車も増やしていくつもりだからって」



樹は真っ直ぐ前を見ながら、ぽつぽつと話し始めた。



「銀行から設立資金借りて、小さな事務所構えて、大型トラック買って。
“樹、そのうちお前も引っ張ってやるぞ”って張り切ってたっけな、あの人」


「ふうん」


「…だけど三ヶ月してその大口の客先ってのが倒産しちゃってさ
仕事が全然来なくなっちゃったんだ」


「えっ」