いつもだと家事で忙しくて携帯が鳴っても気づかないことが多いのに


今はきっとわたしのことが気がかりで、家中肌身離さず携帯を持ち歩いてるんだろな…。


そんなお母さんの姿が目に浮かんできて、何だか鼻がツンとした。




…――ひらひらと

花びらが一片降ってきて、樹の黒いTシャツの肩にとまる。


わたしはそれをそっと摘まんで、鞄から取り出した生徒手帳のビニールカバーのところに押し花みたく挟んでみた。


「何だよ、それ」


「えへへ、お守り」


「お前、安上がりなやつだな」




眩しそうに樹が桜の木を見上げた。