唇を、きゅっ、と。 跡がついてしまうくらい、噛む。 胸が痛んだのは、爽くんの発した言葉への感情とは、また違う。 佑くんの名前が、出てきたから。 「…俺、ずるいよな。」 ストン、と。 悲しそうに歪めた表情と共に、爽くんの言葉は闇へと落ちていった。 その消え入りそうな声色に、思わず下を向いていた顔を、慌てて前へ上げる。 『……っ。』 消えて、しまうかと思った。 顔を上げた先にいた爽くんは、今にも壊れてしまいそうな気がした。